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「はあ、お腹いっぱい……苦しい……」
いつもの倍くらい、食べ物を収めたお腹を絞めつけているショートパンツのボタンを1個外した。
それだけで少しお腹回りに余裕が生まれて、私は大きく深呼吸した。
仰向けになって両手足を放り投げると、このまま夢の中へ出発できそうだ。
私が心地よく出発準備をしていると、コンコンと部屋のドアが鳴り、私は反射的に起き上がった。
「失礼しますよ」
返事がなかったからか、ゆっくりと開いたドアからアユムが顔を出した。
私は慌ててベッドから降りて、ドアに近づいた。
「な、なにか用?」
「ええ、さっきの話が途中だったので」
「……さっき?」
アユムの言う話題に思い当たりがなく、私は首を傾げて考え込む。
すると、マフラーに隠れていた口を見せて、アユムは私に答えを告げた。
「あなたが狙われている理由と、僕らの目的について、です」
射抜くような視線にどきりとして、私は一瞬だけ息をするのを忘れた。
「お互い、知っておいた方が良いでしょう。――とくに、僕らはまだ信用されてないようですし」
そう言って、アユムはにこりと笑って見せた。
ああ、全部お見通しなんだな、と直感して、私は不器用に口角を上げた。
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