大道芸人

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    ◇◆◇  私たちは、寝静まったリビングで、小さな火を(とも)した暖炉を囲んだ。 特別凍えるほどではないけれど、セントールの夜は冷える。 部屋の明かりもかねて、暖炉の周りに右から私、アユム、タクヤの順でラグの上に座った。  パチパチと火の粉を散らす(さま)をしばらく眺めてから、アユムはおもむろに顔を上げた。 「さて、まずは聞かせてもらいましょうか」  それを合図に、私たちを取り巻く空気がピンと張りつめたものに変わった。 暖炉の火が反射して、アユムの目はますます赤くなる。 見慣れない色に、私は不思議な緊張感を覚えた。 「……私も、どこで気づかれたのか分からないんだけど」  私は、速まる鼓動を落ち着かせようと、ゆっくり話し出す。  城内見学が終わって広場に戻ってくると、大きなボタンの衣装の大道芸人が道行く人にチラシを配っていた。 どうやら、今夜のショーの案内らしい。  私も女の人からチラシを受け取ったのだけれど、大して興味を引くようなものでもなかった。 そもそも、私は大道芸にあまり関心がない。  それなのに、彼らの見世物小屋に足を運んだのは、いつもと違う環境のせいか、それとも、写真の人物に1歩近づいて、浮わついていたからだと思う。
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