大道芸人

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「だから、そのリスクを下げるために、人気のないところまで待ったんだろうが」 「テメェは、いっつも(おせ)ぇんだよ! 俺だったら、今頃あのお宝を手に入れてたぜ!」 「声が大きいって、何度言えば分かるんだい、この脳筋野郎は」  話から察するに、この2人が私を追い回していたに違いない。 しかも私を見失ったことで、なにやら揉めているらしい。 この間に、少しでもまた距離を稼いでおきたい私は、足音を立てないように走り出した。  ところが、1つ目の十字路を直進しようとしたとき、なにかにつまずいてしまった。 「! かかった、あっちだよ!」  後ろからそんな声がして、一気に血の気が引く。 引っかかった場所を見ると、そこには細い糸が、ちょうど足首の高さで張られていた。 これが、女性の仕掛けたものだということは、嫌でもすぐに分かった。  恐らく彼女が通った道には、同じように糸が張り巡らされているんだろう。 そうなると、長期戦に持ち込むのは明らかに不利だ。  彼らは、人目のあるところでは手が出せないらしい。 ならば、自分がどこにいるのか定かではないけれど、大通りを目指して逃げればいいはずだ。
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