100年前の遺品

5/10
前へ
/319ページ
次へ
 写真の人物が気になり、家族に聞いて回ったけれど、誰1人として知っている人はいなかった。 1度は、男の子が曾祖父ではと思ったけれど、その子の髪の毛は白っぽく、我が家の髪色はみんな揃って濃い色なので、全くの別人だろう。 「……もしかしてこのロケット、高祖父(ひいひいおじいちゃん)のだったんじゃない?」  そう言い出したのは、お母さんだった。 「ほら、昔言ってたじゃない。高祖父の妹さんが、使用人としてお勤めしてたって」 「じゃあ、この女の人がその妹さんってこと?」 「この服だって、本で見たことない?」  確かに言われてみれば、史書とか写真とかで、城の使用人が着ていた気がする。 女性が妹さんだとすると、ますます隣の子は誰なんだろう。 「許嫁(いいなずけ)……とかかもしれないわね~!」  うふふ、と楽しそうに笑うお母さんを尻目に、私はその写真の男の子を見つめた。  このロケットが高祖父のものだとして、どうして他人の写った写真を入れたんだろう。 兄妹なら、妹さんだけの写真だって貰えただろうに。 それとも、この写真でなくちゃいけない理由(・・・・・・・・・・・・・・・・)でもあったのだろうか。  私は、ロケットのふたを閉じ、丁寧にショートパンツのポケットへ入れると、自分の部屋へ向かった。
/319ページ

最初のコメントを投稿しよう!

21人が本棚に入れています
本棚に追加