15人が本棚に入れています
本棚に追加
4.マッシーモはまだ知らない
マッシーモはトイレの洗面台に手をついた。
足に力が入らない。
心のかさぶたがプランプランと剥がれて鈍く痛みを伴うような、そんな風に心がぶら下がった状態。
指で軽く弾かれるだけでポトンと落ちてしまいそうな、そんな感覚だった。
好きな人にあんな事を言われたショックと、そんな冷めた目でこれから見られるんだという恥ずかしさ。
そして、自分の好きな人はそんな酷い事を平気で言う奴だったんだ、普段は無口なくせに悪口ばっかり饒舌になりやがってという幻滅感。
マッシーモは顔を覆った。
このダンスをきっかけに、雪町君に自分の事を知ってもらおうという思いもあったのかもしれない。
このダンスが上手くいったら、少しは、せめて名前だけでも、少しは──。
(私は馬鹿だ。そんな事あるわけないのに。大馬鹿だ)
「マッシーモ~」
頭上から、声が降ってくる。
座り込むマッシーモの元に、みのが駆け付けたのだ。
「ちょっと時間出来たから最終確認したいって、わたちゃんが──。ってあれ?大丈夫マッシーモ。お腹痛いの?」
マッシーモのただならぬ気配に気付いたみのは、マッシーモの隣に屈んで様子を窺う。
最初のコメントを投稿しよう!