4.マッシーモはまだ知らない

3/6
15人が本棚に入れています
本棚に追加
/20ページ
「やっぱり怖い。恥ずかしい。出たくない」  顔を覆ったまま、くぐもった声を出すマッシーモ。  それには皆「えっ」と驚き、固まってしまった。 「え、ちょ、何言ってんの今更」  すえちゃんは戸惑いを隠せず、むしろ半笑い。こんなすえちゃんが一番怖い。 「体調悪いならまだしも、恥ずかしいとかってさぁ……。何?」  瞬く間に喧嘩腰になるすえちゃん。  マッシーモはついに嗚咽し、心の声を吐露してしまう。 「だって……そもそも青グラは三人組なんだしさ、私一人が欠けたってさ、何も変わらないよ」 「はあ?何勝手な事言ってんの、ここまで四人で練習してきたのに」  怒りを露にするすえちゃんに一瞬びくっとするマッシーモだが、みのが間に入って「待って待って」と仲裁する。 「私、ホントはやりたくなかった。わたちゃんのせいだ。わたちゃん、何で私を誘ったの?私そんなキャラじゃなかったし、キレッキレに踊れないかもしれないし、変な空気になるかもしれない」  心の声が思わず漏れてしまった事を、マッシーモ本人は気付いていなかった。  マッシーモの言葉に、皆しぃんとなる。  怒りや失望からではない。  皆、マッシーモの気持ちがよくわかったからだ。  確かにマッシーモは全校生徒の前でダンスをするようなキャラではない。  運動神経的にも、性格的にも。  わたちゃんが無理矢理引き込んだ形で、無理矢理練習させられたというきらいもあった。  今までよくついてきた方だと思う。今だって、ダンスは完璧とは言えないかもしれない。  普通には振る舞ってはいたけど、本当は不安と緊張で押し潰されそうだったのかもしれない──。  そう思うと、皆返す言葉を失ってしまった。
/20ページ

最初のコメントを投稿しよう!