4.マッシーモはまだ知らない

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 ──…私は馬鹿だ。  こんな事して、大馬鹿だ。  土壇場になって逃げて、泣いて、ぐずって、皆に迷惑かけて。  わたちゃんを、悲しませた。 (わたちゃんっ……!わたちゃん、わたちゃんっ……!)  ぶわっと涙を浮かべた後、マッシーモはおへそに力を込めた。 「…っ、う~~~っ…」  ギッと目を閉じて、すっくと立ち上がる。  そして、顔をバンッと叩いた。 「わたちゃん、ごめん!皆もごめん!私……私ね──」  涙を拭って、叫んで、気合いを入れ直す。 「わかったよ。わかってるよマッシーモ。もう、人騒がせな……」  すえちゃんは、笑いながらマッシーモの肩を小突いた。  みのは「うん、うん。化粧落ちちゃったから直そうね」ともらい泣きしながら、ウィンドブレーカーのポケットに忍ばせていた化粧ポーチを取り出してアイラインを描き直してくれた。 「よし!んじゃあ振りの最終確認しよっか」  わたちゃんはもう、いつものあっけらかんとしたわたちゃんだった。 「ここで?」 「トイレだよ?」 「人来たらよける!」  笑い声で、いつもの和気あいあいとしたムードに戻る。  みのに化粧を直してもらいながら、マッシーモも笑った。  ──ありがとう。ごめん、ありがとう──  目尻から涙が出てまた少しアイラインが滲んでしまったが、マッシーモはもう気にしなかった。  この時のマッシーモは、まだ知らなかった。  竜目祭からの数日後、わたちゃんがお父さんの仕事の都合で転校することを。
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