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「それはネズミのパイだから食べるとお腹がいたくなるよ」
走り去る子供たちに向かって青は呼びかけました。
パイのなくなった青が魔女の穴に帰ると、魔女はテレビを見ていました。
画面には、この国の王妃と王子が映し出されていました。
「偉大なるお母様、ただいま帰りました」
「うるさいね、黙っておいで」
魔女はテレビの画面にアップになった金髪の丸々した王子に舌なめずりをせんばかりです。
「ああ、なんと美味しそうなんだろう」
青は聞きます。
「僕は美味しそうじゃないんですか?」
「お前は私の心臓の一部でできてるからね。美味しそうもなにもないよ」
その時、地域のニュースが読まれました。
「指名手配されていた男が捕まりました。男はネズミ入りのパイを食べて食中毒を起こし、病院に来たところを通報されました」
それが青の渡したパイだとすぐにわかった魔女は怒り出しました。
「お前はなんてダメなんだい。パイひとつまともに配れないのかい?いいことをしたらダメじゃないか!」
「いいことは悪いこと。正しいことはよくないこと。それが魔女の基本だよ!」
「偉大なるお母様。でもそれならば悪いことはいいことになるのではないですか?」
「口答えするんじゃないよ、屋根の上にお行き」
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