19人が本棚に入れています
本棚に追加
秘密
今日も私は放課後、先生の元へと急ぐ。
目指すは先生のいる家庭科準備室。
男性が家庭科教師って珍しい。
しかもうち、女子校だし。
男の先生が教えるって事に慣れなくて初めはみんなも私も戸惑ったし、授業にも集中出来なかったりした。
けれど先生の授業を何度か受けていくうちに純粋に先生は家庭科の授業が好きなんだなぁって事が伝わってきた。
調理実習も被服実習も先生は器用にこなす。
まぁ、そりゃ先生になるくらいだもんね、当たり前か。
前に先生に聞いたことがある。
ーーーどうして家庭科の先生になったの?
って。
すると、
先生んちはお父さんもお母さんも共働きだったから一緒に住んでいたお婆ちゃんに子供の頃はお世話してもらっていたらしい。
お婆ちゃんのお手伝いをするうちにどんどん家事が得意になっていって、自分でも工夫したりするのが楽しくて。
だから両親が留守がちだったけど決して寂しい子供時代じゃなかったと。
高校生になった頃、ある時、ふと思ったそうだ。
自分みたいに親が共働きで一人でいる事が多い子に少しでも家事に興味を持ってもらえればって。
自分がお婆ちゃんに家事を教わったみたいに今度は自分が誰かに教えてあげれたらいいなって。
いつだって真面目な先生らしい理由だと思った。
そんな話を聞いたり、先生の授業を受けていくうちに私も家事に興味を持つようになったし、それにーーー
先生にも興味が湧いた。
最初のコメントを投稿しよう!