終焉

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終焉

 もうじき、世界は沈むだろう。  青のなかへ——  世界の陸地の約八割が水没した。  それは何千年も前から、じょじょに起こった変化だった。  そのころ、私は伝説を探し求めて旅をしていた。  あと百年のうちには、すべての陸が沈むだろうと言われている。人間の数は激減し、退廃的な終末の世相となっていた。  こんななかで、私は何かを成しとげようと思ったわけではない。ただ、この世が滅ぶのなら、その起因するものを知りたいと思った。ただ、それだけだ。  そして、伝説の湖にたどりついた。  海とも川とも空とも違う、神秘的なブルーの水をたたえた湖。  その恐ろしく澄んだ深い青をながめていると、なぜだか胸がしめつけられるように痛む。  湖畔に男が一人、しゃがんでいた。  いったい、何歳なのか見当もつかない老人だ。 「こんにちは。おじいさん。このあたりの人ですか?」  老人は声もなく、うなずいた。 「では、この湖の伝説を知っていますか?」  また、うなずく。 「伝説を聞かせてもらってもいいですか?」  老人が初めて顔をあげ、私を見つめた。  私はドキリとした。  老人の瞳が、まるでミイラのような風貌のなかで、ゆいいつ宝石のようにあざやかなブルーだったからだ。  これほど美しい瞳を見たことがない。  いや、美しいだけではない。何かわからないが、この瞳には大いなる力がそなわっている。見つめられていると、畏れと緊張で、やたらに心拍数があがった。 「聞きたいのか? 旅人よ」 「聞きたいです」 「よかろう。我らの罪の話をしよう」  そう言って、老人は語りだした。
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