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高支那はそれを全て飲み干した。
そう、淡々と…
まるで事務的な作業ででもあるかのように…。
タケルはしばらく脱力したように胸を喘がせていた。
高支那は静かに立ち上がり、そんなタケルを見下ろす。
タケルの目尻に残る涙…
それを見て、その時初めて高支那の表情に僅かな後悔の色が浮かんだ。
タケルは顔を伏せたまま、悔しそうに唇を噛む仕種を見せる。
高支那はその後、軽く目を細めただけで無言でこの場を去ろうとした。
その背に、タケルが顔を上げることなくポツリと呟く。
「なんで…」
高支那が振り返る。
「なんでこんなこと…」
タケルはあまりの悔しさのため、その後の言葉を続けることが出来ない。
高支那はタケルを見つめた。
しかし――
結局言葉を発することはなかった。
そのまま何も言わず、タケルを残し出て行く。
タケルは固く目を閉じた。
「…クソッ…」
タケルの思いと――
高支那の思い――
それはいつまでたっても…
重ならない…
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