11 最後

3/11
957人が本棚に入れています
本棚に追加
/242ページ
と同時に、安堵のため息を漏らすタケル。 高支那が姿を消したかのような錯覚をずっと覚えていたのだ。 高支那がいた―― そのことが、タケルに言い知れぬ安心感を抱かせる。 しかしそれもつかの間。次の瞬間には、昨日の情事を思い出し、タケルはどんな顔をして高支那に会えばいいのか分からず、動揺し始めた。 (なんでオレが動揺しなきゃならないんだ) そんな複雑な思いに駆られながら…。 高支那は真っ直ぐタケルの方へと歩いてくる。 相変わらずの冷めた表情はいつもと変わらない。 動揺しているのはタケル一人か――? そして廊下ですれ違うまでに近づいた時、高支那が抑揚のない声を落とした。 「まだ持っていたのか?」 どうやらタケルが脇に抱えている高支那の上着のことを言っているらしい。 「……」 立ち止まり見下ろす高支那の視線を避けるように、タケルはどこか気まずそうに押し黙る。
/242ページ

最初のコメントを投稿しよう!