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狡猾な「狼」
バイトの青年がバックヤードに戻ると、突然アロハシャツの男が声を荒げる。
「おい、てめぇ…何勝手に戻ってきてんだよ!」
「それが…「店を閉めて『夜叉』を呼んで来い」って言われまして…」
「何?『夜叉』って、兄貴の事か。誰だそいつ?」
「カウンター席にいる客なんですけど… あ、店の鍵はかけてあります」
そう言われてモニターを見ると、確かにカウンターにキャップを被った客が座っている。暇そうに頬杖をつき、カウンターを指で叩いているのが見えた。
「で、相手はどんな奴だ?」
「それが…良く分からないんですよ。服装は女性みたいなんですけど…」
「女か。一体兄貴に何の用事があるって言うんだよ…」
モニター越しにカウンターの客を見つめながらアロハシャツの男が面倒臭そうに呟く。すると突然、後ろからバーテンダーの格好をした男が現れ、モニターを眺める男に声をかける。
「俺も随分と舐められたもんだな、ウルフ…」
「あ、兄貴…この「女」どうします?」
「幸い、相手は俺の顔を知らないらしいな。いつもの方法で行くか…」
「じゃあ、俺が行きます。「あれ」使いますよ?」
「ああ、多分2~3分で堕ちるだろうからな。尋問はその後でいいだろう。それからお前、今日はもうあがっていいぞ」
アロハシャツの男に指示を出し、バイトの青年には帰る様に指示を出す夜叉。バイトの青年はそれを聞いて、返事をすると着替えに入った。
ウルフは頷いて、バックヤードからカウンターへ向かって行った。
バックヤードに残った夜叉はタバコを咥えると、火をつけ紫煙を燻らせていた。
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