狡猾な「狼」

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カウンターでは左手にバングルをした客が、頬杖をついていた。BARに流れる音楽に合わせて、ピアノでも弾くように指でリズムを取っている。 「お待たせ致しました。いらっしゃいませ」 「やっと来た。暇だったよ」 「すみません…奥で準備をしていたものですから。ご注文は?」 「『この店で1番強い奴をストレートで』」 「畏まりました。少々お待ちを」 カウンターにおしぼりを出しながら会話をする男は、注文を聞くと、グラスに琥珀色の液体を注ぐ。そこに小瓶に入った液体を入れ、軽くステアしてレモンの輪切りをグラスに添えた。 コースターを目の前の客の前に出すと、ゆっくりとグラスを置く。小皿に入ったチョコレートを添えて… 「お待たせしました。どうぞ」 「ありがと」 カウンターにいた客は、目の前に出されたグラスに口をつけ、一口飲む。それを見た男が嘲笑って客を見つめる。 「これ、かなり効くね…」 「ええ、家の店の特注品ですから」 息をついて、グラスを置くとカウンターの客が口を開く。 「そう…だから薬の味がする訳か… チェイサー、もらえる?」 「チェイサー?必要ねえだろうよ…あんたは堕ちるだけなんだからな!」 「堕ちる?ああ…そう言う事…」
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