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Prologue:「死神」と呼ばれる者…
夏の日の夕方。日が沈み、空がコバルトブルーに染まる頃。とある大通りから1本入った路地にあBAR『B52』の入り口の横の壁に凭れ掛かる人がいた。
「本当にこの場所で合ってるんですか?ここに『Arcana』がいるとは思わないんだけど…」
でもスマホに示された情報だと、ここなのだから間違いないのだろう。ブーツのつま先で地面を叩きながら、スマホの画面とBARの名前を見比べ、溜息をつきながら呟く。
ジーンズの上から民族衣装のようなワンピースを着て、カーキのMA-1を羽織り、サングラスをかけ、耳にはBluetoothに黒い羽根のイヤーカフ、黒いキャップを被った蒼い瞳の「中性的な人物」が1人…
首からは「No.13:Death」と書かれたドックタグがぶら下げられている。
「今回の仕事、早く片付くと良いのですがね…」
そう言うと、意を決してBARの扉を開ける。ドアに付けられたベルが鳴り、ブーツの音を響かせて中に入る。カウンターにアルバイトらしき青年がいた。
『あの…申し訳ないんですが、まだオープンしてないんですけど』
「悪いんだけど、この店閉めて『夜叉』って奴、呼んでくれないかな?」
そう言うと1万円札を何枚か青年に渡し、カウンターの椅子に座る。
『わ、分かりました。少々お待ちくださいませ』
青年はそう言うとBARの扉に鍵をかけて、バックヤードに消えて行った。
「さて、どう出てくるのかね。楽しみだよ…」
そう言いながら左腕につけられた、まるで手錠の様なバングルを見つめた。そこに、小型の盗聴器が着けられている事など、誰も知らない…
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