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夕食の片付けが終わる頃には、ママの機嫌は良くなっていました。
ママは綺麗で優しくて、おまけに家庭的で料理上手でしたが、怒るとサメのように怖いのです。
「ねえ、ママはどうしてパパと結婚したの? ママは人気者だったんでしょう」
ふと、ナンチュ君は聞いてみました。
「そうね、どうしてかしら」
ママは当時を振り返って考えました。
「パパ以外にも、男のサカナンチュからたくさんのオファーがあったのよ。だけど全部お断りして、パパを選んじゃったのよね」
「パパが変異種だって知っていたの?」
「ええ、もちろん知っていたわ。脚のことや、泳ぎが遅いことを苦にせず、堂々としているパパの生き方に一目惚れしちゃったのよ」
ママは嬉しそうに言いました。
それからナンチュ君のほうに向き直り、急に厳しい口調になりました。
「だからナンチュもパパを見習いなさい! 変異種だからって言い訳をするんじゃなくて、変異種だからこそ頑張って生きるのよ」
ママは、学校をさぼり気味のナンチュ君に手を焼いていました。
無理やりにでも学校に行かせるつもりでしたが、パパに押し留められていたのです。
パパは、昔の自分のように、ナンチュ君が自分なりに考えて成長することを望んでいました。
けれどもナンチュ君は、そんな両親の気持ちがわかりませんでした。
(頑張れ頑張れって先生も言っていたけれど、僕はもうこれ以上頑張れないよ。先生やママは、どうしてそんなことを言うのかな? 僕の生き方は間違っているのかな? 先生の言うとおり、僕が根性なしだからいけないのかな?)
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