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「言い忘れていましたが、王国の外には、絶対に出てはいけませんよ。群れでサカナンチュを襲うカミツキザメや、獰猛なキョダイザメがうようよ泳いでいますからね」
先生は身ぶり手振りで外界の怖さを伝えました。
「それからサメよりも恐ろしい、恐ろしーい生き物、ニンゲンに捕まったらひとたまりもありません。城壁の外に出てはいけません。サカナン城の先端よりも上を泳ぐのも禁止されています」
サカナン城とは、王様が暮らすお城です。
王国で最も高い建物で、初代の大王が命じて建てさせました。
王国の法律では、「城の先端より上は王国の外である」と明確に定められています。
お城は監視塔でもあります。
日夜、サメが襲撃してこないか見張っています。
あるいは、勝手に王国の外へ出ようとするサカナンチュがいないか、兵士たちが目を光らせているのです。
「外の世界は危険です。出ようと思ってはいけませんよ。王国で生まれたサカナンチュは、王国の中で暮らし、王国のために働く。これが国民の美徳なのです。みなさんのほとんどは、サカナンチュ学校を卒業したら、サカナンチュ工場で働くことになるでしょう。それがどうしても嫌なら、軍隊に入るか、たくさんお勉強して学者や大臣になるか、私のような先生になるかですね」
サカナンチュ工場では、さまざまなものが製造されています。
製造物は各家庭に配給されます。
「うろこレンズ」は、工場でもっとも盛んに作られています。
うろこレンズを目に入れることで、一筋の光すらない真っ暗な海底王国でも、ものがよく見えるようになります。
いつの間にか、うろこレンズは海底生活の必需品になっていました。
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