迫り来る王国軍

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ナンチュ君は新説の啓蒙活動をぱったりやめました。 (あんなの続けたって無駄さ。僕が間違いだったんだ。新説だなんて得意になっちゃって、馬鹿な真似をしたもんだよ。やっぱりパパとママが正しかったんだ) ナンチュ君は暗闇の中に心を閉ざしました。 その夜、ナンチュ君は夢を見ました。 夢の中で、カナちゃんが拷問されています。 助けることは叶いません。 カナちゃんはとうとう観念し、ナンチュ君を告発します。 そしてナンチュ君も、塔へ連行されるのです。 (うえーん! 嫌だ、嫌だよう。誰か助けてー!) 目が覚めたら、カナちゃんが忘れていった鞄を握りしめていました。 この鞄の持ち主とは、もう二度と会えないでしょう。 鞄を握るその胸びれは、もう二度と好きな子に触れられないでしょう。 (そうか、僕はカナちゃんのことが大好きだったんだ) 失って、はじめて知ったその想い。 自分がどれだけちっぽけで無力な存在であるかを、認めざるをえません。 仮にカナちゃんが喋らなくても、ナンチュ君が疑われるのは時間の問題です。 ナンチュ君とカナちゃんが、二匹でビラをばらまいたり、張り紙を掲示したりしている姿を見たと、誰かが密告するに決まっています。 状況から、図書室騒動の共犯者であることも、やがておおやけになるでしょう。 (ああ、僕はもう終わりだ。運命に見放されたんだ)
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