11人が本棚に入れています
本棚に追加
貝殻のプレートに盛り付けられた朝食を、ナンチュ君は無表情で見つめていました。
喉を通る気がしません。
「ママ、ごめんなさい。いらないや」
「ナンチュ、カナちゃんが居なくて寂しいのはわかるけど、早く元気出しなさいよ」
ママの優しささえも、ナンチュ君には苦しいばかりです。
「やっぱり、パパとママが正しかったんだね。僕のせいで、大切なカナちゃんが連れていかれちゃったんだ」
「例の活動も、もうやめちゃうの?」
「もう、いいんだ」
ナンチュ君は下を向きました。
「本当にいいの?」
ママはナンチュ君の顔を下から覗き込みました。
「しつこいなあ、もう終わったことなんだよ!」
「そっか。だけど、ママは残念だなー」
ママは、意外なことを口走りました。
「変異種がどうの新説がどうのなんて難しい話は、ママには理解できないわ。だけど、怠け者で有名なあのナンチュ君が、あーんなに目を輝かせて、一生懸命に活動しているところを見ていたら、なんだかママも嬉しくなっちゃって。パパに内緒で、こっそり応援していたのよ」
ママは、見守ってくれていたのです。
ビラをばらまいたり、張り紙を掲示したり、その他あれこれ……。
「やめちゃうなんて、もったいないわ。決めるのはナンチュだけど、これだけは覚えておいてね。ママはどんなときでも、ナンチュの味方よ」
最初のコメントを投稿しよう!