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「あの、みんなにお願いがあるんだけど」
ナンチュ君は意を決して話しました。
「昨日、僕の大切なサカナンチュの女の子が、さらわれちゃったんだ」
なるべくその話題を避けようとしていたナンチュ君の友だちは、ハッと顔色を変えました。
「その子は、昨日まで僕らのクラスメイトだった。このクラスで一番賢くて、勉強家の……カナちゃんだよ」
「おい、よせよ。カナちゃんは監視塔に連れていかれたんだ。助けられないよ。もう諦めなって」
友だちは、ナンチュ君を説得して諦めさせようとしました。
「気持ちはわかるよ。ボクたちだって、つらいんだ。だからカナちゃんの話はやめてくれよ」
「大丈夫だよ、僕には作戦があるんだ。カナちゃん救出作戦に参加してくれる子は、あとで僕のところに集まって欲しい」
クラスメイトは、みんな顔を見合わせてしばらく悩みました。
学校が終わったあと、数十匹の友だちが、ナンチュ君の机を取り囲んでいました。
「勘違いすんなよ、お前なんかのためじゃないぞ。カナちゃんを助けるためだ」
「あたしもよ。ナンチュ君は変な話ばっかり説いて胡散臭いけど、カナちゃんはいい子だもん」
「正直、変異種の子とはあまり話さない。カナちゃんのことは忘れることにしていた。あんなうろこのない女なんて気持ち悪いし全然好きじゃないけど、やっぱりカナちゃんはボクらのクラスメイトじゃなきゃ嫌なんだ」
なんだかんだ言いながらも、みんなナンチュ君の味方でした。
「み、みんなありがとう!」
仲間は集まりました。
ナンチュ君はまた涙があふれそうになりましたが、あの気の強い例の女の子のように、ぐっとこらえました。
「よし、じゃあ作戦を説明するよ!」
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