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(どこへ行ったの、ナンチュ君?)
サカナンチュの子ども、カナちゃんは、学校が終わると、クラスメイトのナンチュ君を探しにいきました。
ナンチュ君は、たびたび学校を休みました。
最近は、無断欠席が目立っています。
ナンチュ君は学校で孤立していました。
カナちゃんだけが唯一の友達でした。
カナちゃんも、ナンチュ君だけが心を許せる相手でした。
ふたりとも変異種だったので、お互いに通じるところがあったのです。
「ナンチュくーん、どこにいるのー?」
カナちゃんは大声で叫びました。
声の波紋が水中に広がります。
(きっと上のほうを漂っているに違いないわ)
浮き袋のある個体は、海底にしっかり尾びれをつけて踏ん張ることが苦手です。
知らず知らずのうちに、上へ上へと泳いでしまいます。
前にナンチュ君が失踪したときも、サカナン城の監視塔ギリギリをふらふらしていました。
監視塔よりも高い位置にいるところを兵士に見つかったら、ただちに捕らえられてしまうでしょう。
(はやくナンチュ君を見つけなきゃ!)
カナちゃんは尾びれで海底の道路を蹴り上げ、全速力で上へ向かって泳ぎ出しました。
カナちゃんは、監視塔の壁面に沿うように、下から上へと進んでいます。
見張りの兵士たちの下っ腹を順番に覗き込むような角度で近づき、垂直にすれ違っていきました。
カナちゃんは必死でナンチュ君を捜索しました。
(居たー!)
ついにカナちゃんは、ナンチュ君らしい浮遊物を発見しました。
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