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何気なく見てみると、唐揚げが三つしかない。ぼくのはいつも四つだったので、四つがこの店の決まりなんだと思っていた。
勝った! と心の中でガッツポーズを作る。確かに隣のお客さんは、こう言っちゃなんだが、くたびれたスーツを着て鼻毛も出た冴えないおじさんだ。ユミちゃんとしても、どちからと言えば、ぼくの方に好感を持っても不思議ではない。
これは明らかにユミちゃんからぼくへのサービスだろう。いやいや、単なるサービスではなく、この唐揚げにはぼくに対する特別なメッセージが込められている可能性さえある。
そう考えると急に胸が高鳴り、心なしか体温も少し上がってきたような気がする。
その時、斜め向かいに座る若い男にも唐揚げ定食が運ばれてきた。
ああ~、唐揚げが五つある! なんということだ。確かにそいつはすらっと背が高く、モデルもできそうなくらいのイケメンだ。
でも、ユミちゃん、ぼくが目の前にいるというのに、その仕打ちがひどすぎるよ。
いつもは最高にウマイ唐揚げ定食も、イマイチ味が分からなくなってしまった。
このまま会社に戻ったら、午後は仕事にならないだろう。たとえ傷つく結果になろうとも、ユミちゃんに真意を確かめておこう。
調理場に足を踏み入れ、ぼくはユミちゃんに尋ねた。
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