狐の宴

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辺りが闇に包まれる、午前0時。 空には雲ひとつ浮かんでおらず、満月の白銀の光が窓から射し込んでいた。 学校の課題を広げたまま、勉強机の上でうつらうつらと船を漕いでいた私は、遠くから聞こえた何かの「音」で我に返った。 何の音だろう。 そう思い、私は耳をすませた。 すると、さっき聞こえたのと同じような音がまた聞こえた。 何かの曲のようだ。 ポン、ポロロロロン しばらく聞いているうちに、ピアノの音だということに気がついた。 こんな真夜中に、ドビュッシーの月の光? どこから聞こえてきているのか気になった私は部屋の窓を開け放って、顔を突き出した。 どうやら、家の裏の森から聞こえているようだ。 好奇心半分、不審感半分で、私は手近にあったパーカーを羽織り、非常用のポケットライトを持って、そっと家を抜け出した。 冷たい秋の夜風に吹かれながら、私は森の中へ入った。 聞こえてくるピアノの音は、次第に大きくなっていった。 さらに森の奥へ奥へと進むと、ぼんやりと明かりが灯っている場所を見つけた。 ピアノの音がよく聞こえる。 恐らく、ここに何かがあるのだろう。
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