狐の宴

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私は近くの大きな木に隠れて、様子をうかがった。 するとそこには、目を疑うような光景が広がっていた。 少しひらけたその場所には、大きなグランドピアノが一台置いてあり、その周りにたくさんの狐たちがまるで人間のように杯を酌み交わして、どんちゃん騒いでいた。 もちろん、ピアノを演奏しているのも狐。 私はこの現実とかけ離れた状況に頭がついていけず、自分の頬を思いっきり抓った。 だが、何度抓っても痛いので、この光景は紛れもなく現実世界で起きていることだとわかる。 私はしばらくその場に突っ立って、狐たちの宴を夢中で眺めていた。 もう少し近くで見ようと足を踏み出した瞬間、私はポケットライトを落としてしまった。 カサッ、とポケットライトの落ちた音で狐たちの動きが一斉に止まり、数え切れない瞳がこちらを一斉に向いた。 それがなぜか怖くて私はすぐに逃げようとしたが、まるで地面に張り付いたように足が動かなかった。 すると奥から一番大きな狐が出てきて私の前に来ると、前脚をちょこんと揃えて座った。 そして、人の言葉で話し始めた。 「おぬしは人の子が見てはならぬものを見た。罰を下さねばならぬ」 そう言うと、前脚を私の鼻にぴとり、とくっつけた。 途端、私の身体はみるみるうちに縮み、あっという間にもふもふの毛が生えてきた。 気がつけば、ふさふさの尻尾までついている。 嫌だ、私、狐になんてなりたくない―――――――!!!
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