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私が初めて会った時の彼女は、公園のベンチで白のワンピースを着て、おしゃまな麦わら帽子を、その黄色く焼きつく日照りから守るようにかぶっていた。
大学と言うものがあって、上京してきたのだという。
だが、道に迷ってしまい、体もほとほとに疲れ、ベンチに座り込んで途方に暮れていたところだったらしい。
そんなことを照れくさそうに笑いながら言う彼女が、なんとも健気で可愛らしいと思った。
もうその時から私は、この野暮ったい目を、完全に射抜かれていたのだと思う。
私も偶然、彼女と同じ大学であったから、彼女を構内で見かけることは少なくなかった。
射抜かれたその目は意識せずとも彼女を向いていたし、かといって目が合いそうになると瞬時に目を離してしまう。彼女には不思議に見えただろうが、こんな乙女心を、男の私が抱くことを許してほしいと、切に願ったものだった。
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