まどろみの中に

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 それから数週間後、私は今、彼女の故郷の海に来ている。 紫の風呂敷に包まれ四角い箱に入った骨壷を抱えて、明け方の東京から真昼の彼女の故郷にまでやってきた。 「お待ちしておりました」 駅に着くと、葬儀屋の方が出迎えてくれた。 海に散骨するにも手続きが必要なのだ。私は早々に葬儀屋の車に乗り込み、各種の案内と手続きを済ませた。 散骨するには船に乗る必要があるという。 「少々時間がかかりますので、お待ちいただく間に何か飲まれますか」 「じゃあ、アイスコーヒーで」 「かしこまりました」 運ばれてきたアイスコーヒーには、スティックシュガ―とミルクが付いてきた。 ミルクをアイスコーヒーにとぷんと入れる。その白さはまさしく純白だ。 ゆっくりゆっくりと溶け合ううちに、その色はまどろみの中に消えていった。
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