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潜伏
◇ ◇ ◇
真夜中。
中天に上りつめた月が、冷たく輝く。
小太郎は、息を潜めて獲物を待っていた。
こうして待つことが、正しいのかどうかはよく分からない。
だが、闇雲に動き回っても、これまで何一つ収穫が無かったことは確かだ。
もう幾日も、何も食ってはいない。
水だけで辛うじて命を繋いできたが、痩せ細り肋の浮いた彼の体は既に、限界だった。
これ以上うろついていては体力を消耗し、いざという時に動けぬ可能性が高い。
今日こそは――…
小太郎はうずくまり、闇に目を光らせて、じっと獲物を待ち受ける。
全ての知覚を研ぎ澄まし、全身の神経をそばだたせて、ひたすら小太郎は待った。
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