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「陽は寝てろ」
そういって飛び起きた達也の体が、ベッドから躍動した。
捲られた布団から出た肌が寒かったので、慌ててまた布団にもぐりこむ。
「寒くないの?」
「じっとしてられねぇ」
素っ裸のまま、ガサゴソと掃除を始めた達也の筋肉に見とれそうになった。
その顔が振り向いて、健康な白い歯を見せる。
「また抱きたくなっちまう」
布団の中で、ぬくぬくと達也の温もりを味わいながら、新しい朝を感じた。
ふたたび繰り返すことのない時間の流れに、笑っていられる今が嬉しくて。
「達也…、大好き…」
裸の背がビクっと止まる。
達也が、兄よりも、あの人よりも、数段に若い身体であることを陽が思い知るのは、
もう少し後。
■風の絆
~完~
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