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声を出そうと息を吸い込んだ。
その時、背後で無理矢理な動きがあり、股間の手が引っ込められると同時に耳元の近くで「うあっ」と呻く声が上がった。
すし詰め状態の中での強引な動きで回りが騒然となる。
必死で首を動かしたそこには手首を押さえつけられている中年サラリーマンがいて、ぎょっとするほど背の高い男が陽を見下ろしていた。
ぎょっとしたのは、確かに回りから頭一つ分飛び出た身長に驚いたのもあったが、女性であれば思わず見とれてしまう端整な顔立ちの中で、一際目を引く鋭い目元の所為もある。
――怖い……
陽は一瞬気持ちが怯んだ。
電車が停車して流れる人波に、その人が中年男を掴んだままホームに流れ出てようやく助けられたことに気がづいた。
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