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ちらばる
夜十時を過ぎたころだった。
まるで蛇がとぐろを巻いたようにぐねぐねと曲がりくねった山道を登る一台の車。その助手席に、私は座っていた。
街灯も人家の明かりもないこの山道は真っ暗で、肉眼ではほとんど先が見えない。
ヘッドライトが夜の暗闇を消し去ろうと奮闘するけれど、その光が照らすのは暗闇のほんの一部分。しかもそこに浮かび上がるのは、さらに深い闇を含んだ山の木々や緑だ。
右へ左へ。体がまるでミキサーに入れられたように揺さぶられる。
正直に言えば少し、いや、けっこうな割合で車酔いしている。ちょっと気を抜いたら、夕食に食べたラーメンが口から出てきそうだ。
それを落ち着かせようと、シートのリクライニングを少し倒す。
車の窓から見える密度の濃い星空が、私の胸をほんの少し軽くしてくれた。
今夜の私たちの目的はこの星空だ。
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