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まとまる
「あー、もう無理! 俺のカメラじゃこれが限界!」
渉がとうとう音を上げた。私は立ち上がって渉の側へ行く。
「どう?」
「こんな感じ」
そう言いながら撮った写真をモニターで見せてくれる。
私のカメラよりはずっといい渉のカメラは、私の撮った写真よりも綺麗だった。暗い空に星の光がわずかに軌跡を描いている。
「おー、それっぽい」
「思ったよりちゃんと撮れた。でもそれが限界。奈美は?」
「これ」
私の写真を見せると、渉はおかしそうに笑った。
「やっぱ無理だったじゃん」
「これでも結構頑張ったんだよー!」
「はいはい」
渉が私の頭をぽんぽんと撫でる。
「流れ星、めっちゃ見たよ」
「まじで? 俺、まだ見てないわ」
寒さは二人の熱をすっかり奪って、私たちは体の芯まで冷え切っていた。
「寒いわー」
「寒いねー、もう帰るか」
「そうだねー」
そう言いながらも、私たちはまだ星空を見上げていた。もう何も映し出していない渉のカメラも私のカメラも一緒に星空を見上げている。
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