真夜中の風鈴

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真夜中の風鈴

 小さく鈴を転がしたような音が聞こえた。風鈴だ。  昨日も、その前の日も同じ音を聞いている。三日前になるとどうだろう、聞いたような気がするが、改めてどうだったかを探ると、後付けで拵えたような味気ない記憶になる。ただ確実なのは昨日も今日も同じ音を聞いているということであり、それが風鈴の音であるということだ。そして不思議なのは、それが聞こえるのは真夜中になってからに限られるということ。  確かに部屋にいる時間は限られている。明るいうちはバイトに出かけていて部屋にいないのだから、この場所でゆっくりするのはいつも夜遅くなってからのことだ。ほとんど寝るためだけの場所となっている賃貸のマンションなので、出来事が夜に集中するのは当たり前といえば当たり前だろう。しかし、それを当たり前と思うか不思議と思うかと訊ねる人がいたとすれば、躊躇わず不思議の方に一票を投じる。
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