夏の終わり

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それは夏の終わり。 急な雷雨の後だった。 夕暮れ時の空に架かる虹を、雨宿りしていた神社の境内から見たケンちゃんは、笑顔で言った。 「行こう! ノブ!」 元々ケンちゃんは足が速かった。 ケンちゃんと鬼ごっこは絶対しなかったし、ケイドロもしなかった。遊ぶ時は、いつもかくれんぼだった。 ケンちゃんは青いTシャツを着ていたから、かくれんぼだと、すぐに見つけられた。僕は隠れることも得意だから、ケンちゃんにはすぐすぐ見つからなかった。 そんな僕だから、ケンちゃんが走り出した時、最初置いていかれると怖かった。 「まっ、待ってよ! ケンちゃん!」 「ほら! ノブ! はやく!」 どんどん遠ざかるケンちゃんの背中。 必死で追いかける僕…… いつもだったなら。 でも、この日は違っていた。
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