0人が本棚に入れています
本棚に追加
第5章 父の最期の言葉
長い梅雨が明けて、初夏の陽気な日差しが街を照らした。
僕は再び片岡さんに誘われた。
何でも、家でバーベキューをするらしい。
「お父さんの会社の人達も集まるんだけど、良かったら池上君も来ないかって」玲蘭は、僕の顔色を伺った。
「僕なんか行ってもいいの?」
「勿論よ。私が友達を連れて来たのが、よっぽど嬉しかったみたい」
「そうか。じゃあ行くよ。本当はバーベキューって初めてなんだよ」と僕はわくわくした。
「いらっしゃい。今日は沢山食べていきなさい」
武史は翔太に、快く振る舞った。
屋敷の庭先に、食材が沢山並んでいる。
10名程の社員の人達も、日頃の仕事の疲れを癒すかのように、大いに盛り上がっている。
「おっ、君は玲蘭ちゃんの彼氏かな?」と若い男性が、翔太にジュースを手渡した。
「あ、どうも。え?いえいえ、ただのクラスメートでして」と僕は慌てて、ジュースを飲み干した。
「駄目よ、山本君。そんな野暮な事聞いちゃあ」とお姉さんが声をかけた。
「だって美子さん、玲蘭ちゃんの友達って初めてじゃないですか?ほら、いつも部屋に閉じこもっていた玲蘭ちゃんも楽しそうだ」
玲蘭は、笑いながら社員の人達に囲まれている。
「あの子も色々あったけど、きっと君のお陰ね」と美子は翔太の肩を叩いた。
僕は何もしてないけど。と、恐縮した。
すると「でも、奥さんがなあ」と山本は顔をしかめた。
「駄目よそんな事、ここで言っちゃあ」と美子は釘を刺して、行ってしまった。
え?お母さんがどうかしたの?
最初のコメントを投稿しよう!