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何とバスの正面が、ボコボコに歪んでいた。
まるで雨がバスを押し止めたかのような有様だ。
僕は気になり、片岡さんの様子を伺った。
彼女はバスの後部座席で、1人窓の外を震えながら見つめていた。
結局、課外授業は中止となり、全員が家に帰されたのだった。
不思議な事があるものだ。
僕はますます、片岡さんがセイレーンではないかと思うようになった。
でなければ、こんなに不思議な事が続くであろうか?
そういえば、僕は彼女の事を何も知らない。
そして、彼女の事をもっと知りたいと思った。
僕の思いが通じたのか、ある日の放課後、片岡さんから声をかけられた。
「池上君、ちょっと」
僕らは2人で、裏庭に回った。
そういえば、ここで始めて彼女を見たんだ。
物思いにふけっていると、彼女は言いにくそうに
「あのね、実は…」
「ええ?誕生日会!」
「そうなの。お母さんが今度の日曜日に誕生日会をしてくれるんで、良かったらどうかなって…」と玲蘭は恥ずかしそうに言った。
「片岡さん、誕生日なんだ。そうか、是非行くよ。他にも来るのかい?」と僕は聞いてみた。
「う、うん。それが…」と玲蘭が言いかけると
「これから春樹らとゲーセンに行くんで、あいつらにも声をかけとくよ」僕は手を振りながら、その場を離れた。
「あの、池上君…」と玲蘭は声をかけたが、翔太にはもう聞こえなかった。
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