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凄いご馳走だった、
お母さんに言ったら、ヘソを曲げるかもしれない。
食事の後には、誕生日ケーキも出てきた。
もう食べきれないよ。
でも、母親を交えた食事は、余り話が弾まなかった。
「玲蘭にお友達が出来たって言うから、この誕生日会を企画したの。だってお友達が来るのって初めてですから」母親は嬉しそうに、玲蘭を見つめていた。いいお母さんじゃないか。
そして、食後の紅茶を飲み終えると「池上君、私の部屋においでよ」と玲蘭が誘ってくれた。
「え?いいの?」女の子の部屋に入るのは、妹の良美以外は初めてだ。
そして、食卓を離れる2人を、母親はじっと見つめていた。
部屋に入るなり、玲蘭が謝ってきた。
「ごめんね池上君。他に呼ぶ人もいなかったんで。1人で退屈だったでしょう?」
「そんなの気にしてないよ。とっても楽しかったよ」
「本当?」玲蘭の顔が、パッと明るくなった。
「それに、とっても優しいお母さんじゃないか」と僕は、目のやり場に困りながら言った。
「うん。外面わね」と何か言いたげだった。
そして「幸せだったんだあ、昔はね」と玲蘭は、自分の事を話し始めた。
玲蘭には双子の姉、聖蘭( せいら ) がいた。
父親の武史は、40歳にして出来た子供らを、大層喜んだ。
玲蘭が2歳の頃、家族で小型船の遊覧に出かけた時、異常天候で嵐に巻き込まれ、遭難しかけたそうだ。
奇跡的に助かったが、2歳の玲蘭には勿論記憶になかった。
大きくなってから、父親に聞かされたそうだ。
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