第4章 2人きりの誕生日会

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父親の武史は、貿易商を営んでいる社長さんらしい。よく海外に行くのに、船を利用したりする位、海が好きだと言う。 僕のお父さんと同じだ。 そして、忌まわしい事故が起こった。 玲蘭が10歳の時、母親の圭子が実家の墓参りに帰る事となった。 武史は主張中であった為、2人の子供と一緒に帰るはずだった。しかし、玲蘭が風邪で寝込んでしまい、仕方なくお手伝いさんに面倒を見てもらって、聖蘭と2人で車で帰省したそうだ。 そして、実家から戻る途中の事だった。 海岸沿いのくねった道を走っていた時、突然、前方からトラックが車線をはみ出して来た。 結局、2人を乗せた車は、崖に転落して亡くなったそうだ。 それから武史も玲蘭も、悲しみに暮れた。 その頃から、玲蘭は誰とも話さなくなった。 中学に上がっても、よく体調を崩しては、床に伏せっていたという。 そんな娘を見かねたからだろうか? 武史は今の母親の真弓と再婚した。 彼女は武史の秘書をしていて、優秀だったらしい。 「でも、私は今のお母さんと馴染めなくて」と玲蘭は俯いた。 僕はなんて言ったらいいのか、分からなかった。 彼女もまた、被害者なのかもしれない。
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