第5章 父の最期の言葉

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「へえ、可愛いですね」 双子の生まれたての写真。 そして七五三かな?着物が2人柄違いだ。 遊園地に動物園、双子のお姉さんといつも一緒だった。 そしてある時から、1人になった。 「君も聞いていると思うが、姉の聖蘭と前妻の圭子は、事故で亡くなったんだ。それからあの子は変わってしまった」武史はしみじみ話した。 「そう言えば、前のお母さんの姿が、一枚も写ってないですね?」僕はそう言ってから、はっ!とした。しまった、聞くんじゃなかった。 すると「まあ、今の妻がね。余り良く思ってなくてね」と武史は曖昧に応えた。 その時、アルバムから一枚の写真がこぼれ落ちた。 「あれ?」僕はそれを拾い上げた。 「ああ、それは昔、海難事故にあった時に家族を助けてくれた人の、お葬式の写真だよ。私達の命の恩人だ」 僕は手が震えていた。 「お父さんだ」 「え?何だって?」武史は聞き直した。 「僕は小さかったから、写真でしか知らないけど、これ、僕のお父さんです」 2人は沈黙した。
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