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僕は小学5年の時、海で溺れた事がある。
母には、余り遠くには行かないように言われていたが、海水浴場は賑やかで、ついつい羽目を外してしまう。
僕は妹と、ゴムボートを取り合いしながらはしゃいでいた。
「お兄ちゃん、ずるーい!」妹の怒った顔を尻目に、僕は1人ボートに揺られていた。
気持ちいーい。うとうとして気がつくと、かなり沖に流されていた。周りを見回しても誰もいない。
僕は怖くなって、ボートにしがみついた。
すると突然、大波がボートを揺さぶった。
「うわーっ!」僕は海の中へ投げ出された。
「誰か、助けて!」
僕は必死になってもがいたが、身体が一旦水中に潜ると、中々浮かばない。
やがて、水面から差し込む光が、段々遠ざかって行く。
もう意識も薄れて来た。
お母さん、ごめんよ。
すると海の底から、誰かが僕を抱きかかえた。
え?
お姉さんは誰?
それは長い黒髪を揺らした、綺麗な目をした少女だった。
もう大丈夫よ。さあ、もう少し我慢して。
そんな言葉が、頭の中から聞こえた。
僕は彼女に抱えられ、光が差し込む方へと上がって行ったのだ。
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