第6章 真弓の本性

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「そうなの、悲しい思いをしたのね」お母さんは、涙目で応えた。 「はい、その海岸沿いは今でもお花を手向けに行くんです」と玲蘭が言った時「それって周防浜の事?」とお母さんが聞いた。 「そうです」周防浜は、海水浴場でも有名だ。 「確か6年前って言ったわよね?」お母さんは僕を見た。 「翔太が溺れたあの事故、確か周防浜だったわ。時期も同じね。それにお父さんの事故も、周防浜の沖合で起こったのよ。何だか偶然って怖いわね」 お母さんは、武者震いをしていた。 僕は何故かその時、セイレーンを思い出した。 玲蘭の顔が、セイレーンと重なって見える。 いや、聖蘭なのかもしれない。 何故かそんな風に感じていた。 玲蘭が帰宅すると、真弓が声をかけた。 「遅かったのね。それよりあなた、どう言うつもり?」真弓は腕を組みながら、睨んだ。 聖蘭の事だと、すぐに分かった。 真弓に引っ張られて、聖蘭の部屋に連れて来られると「何なの?この荷物は!」 そこには、聖蘭が大切にしていた人形が、いくつか並べてあった。 「やっぱり聖蘭が寂しがると思って…」と玲蘭は言葉を濁した。 「あれだけ片付けろと言ったわよね!母親に刃向かう気?」真弓は、玲蘭に平手を食らわした。 「あっ!」玲蘭は、その場にうずくまった。 真弓は気が治らないのか、玲蘭を何度も足蹴りにした。 「ごめんなさい、ごめんなさい」玲蘭は頭を抱え、泣いて詫びていた。 「今度こんな事したら、承知しないわよ!お父さんに告げ口したらどうなるか、分かってるわよね」 真弓はふんっとドアを勢いよく閉めて、階段を降りて行った。 聖蘭、助けて… 玲蘭はしばらく、うずくまって泣いた。
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