第6章 真弓の本性

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真弓は玲蘭が学校に出かけると、お手伝いの清子に「少し出かけて来るわ。お昼は外で済ませるから」 そう言って外出した。 武史は長期の海外出張で、もうしばらくは留守にしている。 ある喫茶店に入ると、奥にいる男がサングラスを外して手を少し上げていた。 「余り大っぴらに会えないんだから、気をつけてよ」と真弓は、仏頂面だ。 「何だよ兄貴に向かって。それでどうなんだ?あっちの方は」兄の修二は、2杯目のコーヒーをすすった。 真弓は紅茶を注文して「そんなに焦らないで。上手く勧めてるんだから」と、タバコに火を付けた。 「こっちは、前の嫁さんと娘にも手をかけているんだぞ。早く遺産の話を勧めろよ」と修二は小声で囁いた。 「分かってるわよ。玲蘭を何とかしたら、後はこっちのものよ。でも、最近は色気付いちゃってさ。 鬱陶しいガキがうろちょろしてるのよ」と真弓は毒づいた。 「とにかく、俺も金がいるんだよ。早いとこ頼むぜ」そして修二は、真弓のタバコの箱から一本抜き取り、くわえて火を付けた。 「まあ考えがあるから。その時は協力してよ」 真弓はそう言って、伝票をつまみ上げた。
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