第6章 真弓の本性

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もうすぐ、待ちに待った夏休みだ! 皆んなは、海水浴の算段で盛り上がっているが、僕は海が苦手だ。 出来る事なら山がいいかな。 森の空気をいっぱい吸って、日頃の疲れを癒すんだ。山はいいぞー! すると玲蘭が声をかけてきた。 「えー?くるーじんぐ?」そう聞いて、漁船で魚を釣りに行く姿を思い描いた。 「そうなの。今年はお父さんが私のために、計画してくれたの。それで池上君も是非にって」 玲蘭は嬉しそうだ。 何でもお父さんは、大きなメガヨットを持っているらしい。船内には、シャワーにトイレ、キッチンに数室の部屋もあるそうだ。 最近、余り元気のない娘のために、2泊3日のクルージングを企画したと言うわけだ。 僕は海は苦手だが、彼女の笑顔が見れるなら、船の旅もいいかなと思ってきた。 早速、お母さんに報告した。 「えー?いいな、いいな。お兄ちゃんだけ」良美が手をばたつかせた。 「お前はどうせ、水泳部の練習だろ?」 「せっかくの招待なんだから行っておいで。ついでに水恐怖症も克服出来るかもね」と母親は笑っている。 そんなに簡単に治るなら、苦労はしないよ。 「私なら治してあげるのに」と良美がにやけた。 「へえ、どんな風に?」期待はしてないが、一応聞いてみた。 「後ろから、海に突き落とすのよ。ライオンも、親が子を崖に突き落とすって言うじゃない」 お前は親じゃないだろ! それにお前の場合、悪意があるんだよ。悪意が。
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