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そして午前中の授業が終わり、友達と3人で弁当を広げた。
中学からの親友だ。
「おい、校内を探索しようぜ」春樹が弁当箱を片付けながら言った。
「いいね。行こうぜ」康夫も賛成した。
食後の散歩がてら、3人で校舎の裏庭を歩いていると「あれ?あの娘って」と僕は、春樹に声をかけた。
その娘は木陰で1人、本を読んでいた。
おかっぱ頭で眼鏡をかけている。言うなれば地味な生徒であった。
「ああ、あいつね。何か他のやつに聞いたら、いつも1人でいるんだってさ。人と余り喋らないし、中学でもイジメられてたらしいよ」
春樹は、昔から情報通だ。
「そうなんだ」その時、風に揺られた彼女の髪が、その横顔を覗かせた。
僕は一瞬、ドキッとした。綺麗だ。
春樹に言えば笑われそうだが、その時僕はそう感じた。
僕はその日から、彼女の事が気になっていた。
多分、そんな事を言うのは、クラスでも僕だけだろう。何故なら、皆んなは、彼女に全く興味がなかったからだ。
そんなある日、学校の帰り道で小さなため池を通りかかった。
余り近づきたくはないが、近道なのだ。
すると、犬の鳴き声が聞こえてきた。
ため池を見ると、仔犬が溺れて、バシャバシャと両手を掻いていた。
「大変だ!」
僕は慌てて助けを呼ぼうとしたが、周りには誰もいない。
水が苦手な僕には、どうする事も出来ない。
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