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すると、1人の女生徒がスカートをまくって、池の中に入って行くではないか。
かなり浅かった様で、ひょいと仔犬を抱き上げて戻って来た。
「だ、大丈夫?」僕は彼女に駆け寄った、
え?よく見ると、あのおかっぱの女の子だ。
「勇気があるんだね。僕には真似出来ないよ」
すると彼女は「ここは浅いの知っていたから」と平然な顔をして言った。
そうなんだ。
でも、水恐怖症の僕には、とてもじゃないが真似出来ないだろう。
「それに、犬が好きだから」
「あの、君は…」と、僕が言いかけると
「片岡 玲蘭」と名前を教えてくれた。
「かたおか れいら…。えーと、僕は…」
「池上 翔太。君でしょ?」
「え?僕の事知ってるの?」僕は少し、驚いた。
「だって同じクラスだもん」と玲蘭が笑った。
「あっ、眼鏡濡れているよ」僕は恥ずかしさ紛れに、慌ててハンカチを手渡した。
「ありがとう。でも、足の方が大変だけどね」と玲蘭は笑いながら、すっと眼鏡を外した。
その時、僕はドキリとした。
眼鏡を外した彼女は、何とも綺麗な顔立ちであった。
玲蘭は、はっとして「コンタクト苦手なの。この方が楽だし」と慌てて掛け直した。
眼鏡を外した方が素敵だよ。とは恥ずかしくてとても言えないので、心にしまっておいた。
それ以来、僕と玲蘭はたまに話をする様になった。
話して見ると、優しい子なんだと実感した。
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