第2章 気になる彼女

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「お兄ちゃん、何だか最近楽しそうだね」妹の良美が言った。 夕食を食べながら、僕は今日の事を考えていた。 「え?そうかな。そうでもないよ」と白々しく応えた。 「好きな子でも出来たんじゃないの?」とお母さんも話に乗ってきた。 「何だよ、母さんまで」と、僕はコップの水を飲み干した。 「そうよ。ご飯食べながらにやにやしていたら、誰でもそう思うって。気色悪いけどね」と良美は言葉をオブラートに包む事を知らない。 僕は何だか居心地が悪くなり「彼女はそんなんじゃないよ。ご馳走さま」と席を立ち、自分の部屋に閉じこもった。 「やっぱり女なんだ」と2人は顔を見合わせて笑った。 僕は部屋で、今日のあの事を考えていた。 どうして水が、僕らを避けたんだろう? 普通に考えても、水があんな動きをする筈がない。 ふと、あの頃の顔が思い浮かんだ。 もう大丈夫よ… 黒髪を揺らした、綺麗な目をした少女。 そして、眼鏡を外した時の片岡さんの瞳。 どことなく似ていた。 「まさかね。もう6年も前だし」僕はベッドに、身体を投げ出した。 でも…もしかしたら… 「翔太君。私、本当は海の妖精なんです。前から翔太君の事が…事が…」 僕は想像しながら、枕を抱きしめていた。 うおー!とベッドの上をゴロゴロしていると 「お兄ちゃん、何やってんの?」と良美がドアの隙間から、軽蔑の眼差しで覗いていた。 「な、何だよ良美!勝手に覗くなよ!」僕は慌てて喚いた。 「気色悪うー」そう言ってドアをバタンと閉めた。 あちゃあー。よりによってあいつに見られるなんて、最悪だ。 「お母さーん!お兄ちゃんがね」と下で声が響いていた。 やっぱり言うんだ…。
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