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彼女は僕の手を取って走り出す。
「すみません」と小さい声で謝りながら人を避けて走っているうちに、土色の道が次第に砂利を含んだ道に変わっていく。
転ばないよう必死になっていると
「ここ!」
彼女はそう言って手を離した。
飲食店や物産販売店のテントが連なるその場所は、たくさんの人たちが行き来していた。
「ここでご飯食べよ!」
僕の返事も聞かず、彼女は再び僕の手を握り、人混みに飛び込む。
まず彼女が目につけたのは、行列ができている店だった。
何に並んでいるのだろうと思い、列の横から顔を出す。
プレハブに貼られているボードには、ジェラートメニューと書かれている。
いきなりデザート……と思いつつ、僕はその内容に視線を移す。
「何味食べたいの?」
「しぼりたてミルク! 何味食べる?」
「えっと……僕はいいよ」
最初からデザートはちょっときつい。
食べるなら、甘いもの以外で食べ歩きできるような物がいい。
どこかいいところはないかと辺りを見渡していると
「お客様、ご注文は?」
いつの間にか列の先頭にいたようで、男性店員さんが注文を聞いてくる。
「しぼりたてミルク! コーン!」
「300円になります」
「300円……」
彼女は、ぽかんとした顔で店の奥を見ている。
まさか……
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