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「お金持ってないの?」
「お金……うん……」
僕はリュックから財布を出し、300円を渡す。
支払いと同時にジェラートがやってきて、彼女はそれを受け取った。
「……ありがとう」
「どういたしまして。財布忘れちゃった?」
「うん……」
彼女はジェラートを食べながら、申し訳なさそうに顔を伏せるけど
「次、あれ食べたい!」
「え、財布持ってないんじゃ……」
「買って!」
「はい!?」
「買って! お願い!」
「……しょうがないなぁ……」
つぶらな瞳でおねだりしてくる彼女に、僕は財布の紐を緩めるしかなかった。
夕方。
僕の財布は大変なことになっていた。
彼女のせいで、お金はバスに乗るのがやっとの金額しか残っていない。
でも彼女が幸せそうにしているなら、それでいいと思えた。
今日一緒に過ごしていて、ちょっとだけ素顔が見えた気がする。
見た目教養がありそうなのに、話し方は幼いこと。
よく食べること。
少し強引でわがまま。
そして一番気になることがひとつ。
今から聞こうとしていることだ。
公園内のベンチに座り、彼女に尋ねる。
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