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推察
9月19日、放課後。
大粒の雨が教室の窓を叩く。
窓にぶつかった雨が流れていく様子を眺めながら、僕は考えていた。
なぜ彼女は雨の日に会うことを選んだのか。
家に帰ったときから、この疑問は居座っている。
「ひゃあ~、すごい雨だねぇ」
のんきな声に振り返れば、千影が立っていた。
体操着姿の彼女はいちごみるくを飲みながら、僕の前の席に座り、足を組む。
「雨が弱まるの、待ってんの?」
「まぁ、そんなとこ」
「とか言って、何か考えてるんでしょ?」
図星だけど、平静を装う。
彼女にばれると何かと面倒くさい。
「どうしてそう思うの?」
「濱田からチョークの制裁くらってたから」
「うっ」
そうだった。
実は数学のとき、彼女のことに頭を使っていたせいで先生に注意された。
人生初の出来事は、額の中心にチョークが命中するおまけまでついた。
「久しぶりに見たわ~、チョーク投げる先生。この時代にはもういないと思ってたから」
千影は笑いながら話す。
「笑わないで。あれけっこう痛かったんだよ?」
「ふぅ~ん。またチョークの被害に遭ってたら動画撮ってあげる」
そんなことしたら怒られるよ、と言おうとした瞬間――
「――で、何を考えていたの?」
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