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さらに髪も短くカットし、普通の大学生のような見た目になった。
ただしそこには、“すこぶる美形の”という形容詞がつく。
美しさで言えばジェラルドが圧倒的だが、一花はレイの顔と雰囲気が一番好きだった。
毎日飽きるほど顔を見ているのに、どれだけ見ていても飽きない良さがあって、それは彼の容姿だけでなく、声も仕草も笑い方も、全てが一花にとって一番愛しくて魅力的なものだった。
レイにとってもまた、一花の全てが世界で一番美しく愛おしいものだった。
彼女の笑顔、仕草、声、彼女が自分に向けてくれるもの全てが、彼にとってはどんな宝石や金貨や芸術品よりも価値があり輝いていた。
誰が見てもお似合いの二人は、毎日一緒に過ごし穏やかに愛を育んでいた。
手を繋いだまま、レイは「あと二週間ほどでクリスマスだが」と愛しい恋人に言った。
「この国では、クリスマスは恋人同士のイベントなんだろう? 僕に何か希望はないか?」
「え……」
「頼まれずともプレゼントは勝手に用意するつもりだが、他に欲しい物はないか?」
去年も問われたその質問に、一花は笑いながら「欲しい物はないよ」答えた。
「あ、でも……」
「なんだ」
「えっと……」
「…………」
「ええと……」
「……ないのなら、僕はもう部屋に戻るぞ」
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