69人が本棚に入れています
本棚に追加
/34ページ
「い、言います、言いますっ」
気がつくとホールには二人だけ残されて、一花はそれでも、隣にいるレイにだけ聞こえる小さな声で囁いた。
「あの、で、デートを……」
「…………」
「その、レイと一緒に、お出掛けしてみたいなぁって……」
「…………」
「今って街もイルミネーションが綺麗だし……。この前、貴瀬さん家族が海洋博物館と旧居留地に行って来た話を聞いて、えっと、私もレイとそういう場所に出掛けられたらいいなぁって思って……」
一花はそこで繕うように笑い、「でも無理だよね。だってデートスポットって、人が沢山いるし……」と呟くように言った。
レイは一瞬無言になり、真顔で「ダメだ」と言った。
直後に、「と僕が言うと思うのか?」と続き、一花は「え?」と目を瞬かせた。
レイは呆れた口調で、「一体何のお願いかと思ってみたら、そんなことか。君は本当に欲がないな」と言った。
「え、じゃあ、いいの……?」
てっきりジェラルド同様、レイも人が集まる場所には出て行けないと思っていた一花は、喜ぶよりも驚きでポカンとした。
レイは事もなげに、「ああ。出掛けるのはいつがいい。明日か?」と言った。
「えっ、あ、ちょっと待って!」
最初のコメントを投稿しよう!